論文を書いた私が答える、犬の肛門腺Q&A。飼い主さまからよくいただく疑問にお答えします。

肛門腺について、正しく知っていただきたい
前回の記事では、肛門腺絞りと肛門嚢炎の関係を研究した論文についてお伝えしました。今回は、飼い主さまからよくいただく犬の肛門腺Q&Aをまとめました。疑問の解消にお役立てください。
Q1. そもそも肛門腺(肛門嚢)って何ですか?
A. 犬の肛門の左右には「肛門嚢(こうもんのう)」と呼ばれる袋状の構造があり、その中に強いにおいを持つ分泌液が貯留されています。これが一般的に「肛門腺」と呼ばれているものです。
なお、「肛門腺」という呼び方は一般的に広まっている言葉ですが、正確には「肛門嚢(肛門傍洞)」です。この記事では、飼い主さまに馴染みのある「肛門腺」という表記で統一してご説明します。
Q2. 肛門腺はどこにあるの?
A. 肛門嚢は左右に1つずつあり、肛門を時計の中心として4時と8時の方向に位置しています。
Q3. 何のためにあるの?
A. 実は、肛門腺が何のためにあるのかは、現時点では完全には解明されていません。犬や猫がこの臭いを使って相手を識別したり、縄張りの臭い付けに利用しているのではないかと考えられていますが、確実なことはわかっていません。
Q4. 絞らないといけないの?
A. すべてのわんちゃんに必要なわけではありません。
この分泌液は本来、排便時に自然と排出されます。つまり、自然に排出できているわんちゃんには、絞る必要がありません。
ただし、分泌液が硬くて出づらい、何らかの原因で導管や開口部が狭くなってしまっている、肛門括約筋の力が弱くうまく排出できないなど、さまざまな理由で溜まりやすいわんちゃんがいます。溜まること自体は悪いことではありませんが、溜まったことでお尻を気にして舐めたり床に擦りつけたりする行為が見られる場合は、絞ってあげる必要があります。
また、私たちが行った研究では、肛門腺絞りと肛門嚢炎(病気)との因果関係は確認されませんでした。つまり、「絞らないと病気になる」という情報は、現時点では根拠があるとは言えません。
Q5. どのくらいの頻度で絞ればいい?
A. わんちゃんによって異なります。
健康なわんちゃんには、基本的に絞る必要はありません。絞ることが必要と考えられるのは、溜まることでお尻を気にして舐めたり、床に擦りつけたりする行為があり、かつ絞ることでその行為が消失する場合です。頻度はわんちゃんによって異なりますので、日頃からよく観察してあげることが大切です。
Q6. 自分で絞ることはできる?
A. できますが、初めての方にはおすすめしません。
肛門嚢の位置を間違えると上手に出せないことがあり、犬が嫌がってしまうことにもつながります。まずはかかりつけの獣医師やトリマーに教えてもらい、正しい方法を確認してから行うことをおすすめします。
Q7. 絞るのは痛くないの?
A. わんちゃんによって異なりますが、嫌がるわんちゃんは多いです。
肛門はとてもデリケートな部位です。強い力で絞ると痛みを伴うこともあります。嫌がるサインが出ているときは無理に行わず、獣医師に相談することをおすすめします。
Q8. サロンと病院、どちらで絞ってもらうべき?
A. 状況によって異なります。
日常的なケアとして絞る場合はサロンでも対応できます。しかし、腫れや強い臭い、出血など気になる症状がある場合は、まず動物病院を受診してください。病気が疑われる場合は、獣医師による診断と治療が必要です。
Q9. 肛門嚢炎ってどんな病気?
A. 犬には、肛門の左右に肛門嚢という袋が一対あります。その中に悪臭のある貯留物(液体もしくはペースト状)が入っています。この肛門嚢が何らかの原因で炎症を起こしてしまうことを肛門嚢炎といいます。
悪化すると皮膚が破れることもありますので、気になる症状があればすぐに動物病院を受診してください。
Q10. お尻を床にこすりつけるのは肛門腺が原因?
A. 可能性のひとつですが、すべてがそうとは限りません。
犬は肛門に不快感を覚え、肛門を舐めたり、咬んだり肛門を床に擦りつけたりします。しかし、お尻を床にこすりつける行動は、肛門腺の問題以外にも、寄生虫・皮膚炎・アレルギーなどが原因のこともあります。症状が続く場合は動物病院への相談をおすすめします。
Q11. 肛門のまわりが腫れている・臭いがひどいのは病気のサイン?
A. はい、すぐに動物病院を受診してください。
腫れ・強い臭い・出血・膿のような分泌物が見られる場合は、肛門嚢炎や他の病気の可能性があります。自己判断せず、早めに獣医師に診てもらうことが大切です。
Q12. 絞らないと破裂するって本当?
A. 溜まったことが原因で破裂するわけではありません。破裂した状態とは、肛門嚢の炎症が皮膚にまで到達し、皮膚が破けた状態のことを言います。これは肛門嚢炎が悪化した状態で、肛門膿瘍と言います。溜まることですぐに破裂につながるわけではありませんので、ご安心ください。
Q13. 絞らないと本当に病気になるの?
A. 現時点では、その根拠は確認されていません。
私たちが獣医師と共同で行った研究では、肛門腺絞りと肛門嚢炎の因果関係は証明されませんでした。「絞らないと病気になる」という情報は古く、現在の科学的知見とは異なります。詳しくは前回の記事をご覧ください。
Q14. 絞っていたのに肛門嚢炎になったのはなぜ?
A. 肛門腺絞りが肛門嚢炎の予防に直結しないからです。
私たちの研究でも、絞っていても肛門嚢炎になることが示されました。肛門嚢炎の原因はさまざまあり、絞ることで防げるものではないと考えられています。
Q15. 一般的なサロンではコースに入っているのに、絞らなくていいの?
A. サロンのコース内に含まれるようになった経緯はわかりませんが、leafdogでは必要がないわんちゃんには絞らなくてよいと考えています。
すべてのわんちゃんに一律に行うのではなく、必要かどうかを判断した上でご対応しています。ご不安な点があれば、お気軽にご相談ください。
※この記事の内容は、一般的な情報提供を目的としています。わんちゃんの体調や症状に関しては、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
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