トリミングサロンに求めるもの。「犬への優しさ」は、誰の視点で見るかで変わる。

ペットサロンに求めるもの、1位は「犬へのやさしさ」
ペットサロン協会のデータによると、飼い主さまがペットサロンに求めるものの1位は、「犬へのやさしさ」だそうです。
グルーマーが犬にどう接しているか。それを見たいと思う飼い主さまの気持ちは、よくわかります。でも実際には、グルーミング中ずっと見ていられるわけではありません。受付のときと、お返しのときくらいしか、目にする機会はないのが現実です。
2人のグルーマーの話
犬の行動学を学ぶと、犬に接するときにどうすれば良いかが見えてきます。
あるとき、プロのグルーマーが私のお店に来たことがあります。その方は、私の犬と目を合わせず、犬に触れることもなく、私とだけ目を合わせて話をしていました。犬が自由に近寄ったり離れたりすることを、そのままにしておいてくれていました。
犬は吠えることもなく、私の後ろに隠れることもありましたが、緊張感は少なく、落ち着いた様子でした。
別のとき、研修生がお店に来たことがあります。その方はしゃがみ込んで犬を直視し、両手を大きく広げながら、犬の名前を呼んで「おいで」としていました。
犬は、強い緊張で吠え、後ずさりしながら警戒心をあらわにしていました。
どちらが「良いグルーマー」か
答えは、最初のグルーマーです。
犬の行動を熟知しており、犬が何で恐怖を感じるかをわかっている。だから、あえて距離を保ち、犬のペースに任せていたのです。
でも、犬の行動学を知らない人が見たら、どう感じるでしょう。「犬を無視して、なんて冷たい人だろう」と思うのは、ごく自然なことだと思います。
一方、後者の研修生のほうが、犬に優しそうに見えますよね。好意を示して、受け入れる姿勢を見せている。人間の視点では、そちらのほうが「犬好きな人」に映ります。
しかし犬の視点から見れば、目を直視されることは威圧になります。大きく広げた腕は、「捕獲されるかもしれない」という恐怖でしかありません。
だれの視点で見るかによって、「犬への優しさ」はまったく違うものになるのです。
グルーマーには、葛藤があります
ここで正直に言わせてください。
私たちグルーマーには、葛藤があります。犬はお金を払ってくれるわけではありません。犬に気に入られても、飼い主さまに気に入られなければ、来店してくださらないのです。
だから私たちは、犬にとっては緊張を誘発するとわかっていることでも、飼い主さまの前ではあえて「飼い主さまが望むグルーマー」を演じることがあります。
それは逃げではありません。飼い主さまとの信頼関係を先につくり、トリミングルームの中でしっかりと犬とのコミュニケーションをとる。そのための判断です。
飼い主さまが強い不安を抱いていると、その不安は犬にも伝わります。逆に、飼い主さまが安心してくださっているとき、犬も緊張が低い状態で来店してくださることがあります。飼い主さまの気持ちと、犬の状態はつながっているのです。
正解はないかもしれない。だからこそ。
私たちは人間なので、相性もあります。思い込みやラベリングで相手の印象を決めつけてしまうこともあります。なかなか思い通りにいかないことのほうが多いのが、人間関係というものだと思います。
どのような接し方が犬にとって優しいのかも、その人の知識や経験によって違いますし、正解はひとつではありません。
leafdogでは、どちらだけが重要というのではなく、その時の状況に応じて、お互いを尊重し合える接客ができたらと思っています。
正解はないかもしれない。だからこそ、お互いを知ろうと努力することが大切なのだと、私は感じています。
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